主にひとりごと

タイトル通り、ときぶいすの担によるひとりごとです。感じたことを語ったり、好きなことを話したり

トンボを思って心をへし折られた

自担こと宮舘涼太さんが自身初の連ドラレギュラー出演を務めていらっしゃる木10ドラマ『大奥』
普通に毎週楽しんで見ていたところ、6話での定信さまの言動に大いに狂わされ、考えれば考えるほどいい意味でしんどくなってきたのでちょっとだけ吐き出しておく。








──時は江戸中期。景気は悪化の一途を辿り、日本国民は質素、倹約、勤労の日々を強いられていました。
格差は広がるばかりで、人々はこの景気を改善し、国と国民を豊かにしてくれる将軍の登場を待ちわびています。
そんな中、倫子第10代将軍・徳川家治と政略結婚を強いられ、京から江戸城本丸の裏にある大奥へ渡ると、そこには1000人近くにも及ぶ将軍に仕える女たちがいました。たった一人の天下人の寵愛を受けるべく、今、女たちの熾烈な戦いの火ぶたが切られるのです。一方その頃、大奥を、江戸幕府を、混乱の渦に陥れようと、ある人物が陰謀を企てていて……。

(フジテレビ『大奥』より引用 大奥 - フジテレビ)




宮舘さんが演じる役どころは松平定信
主人公・倫子の幼なじみにして10代将軍・家治の従兄弟にあたる関係。つまり8代将軍・吉宗の血を引いている、本来であれば正当な後継者候補だった男。
幼少期に養子に出されたこともあり姓が変わっているため、名乗られるまで倫子も彼の正体が幼い頃に一緒に遊んだ「賢丸(まさまる)」であることには気づかなかった。




定信さまはぶっちゃけ6話に至るまで登場シーンがさほど多くないため1〜5話を超ダイジェストでおさらいすると、彼は5話までの段階で
・御台所となった倫子さまに意味深かつ不穏な忠告をしてくる
・実は吉宗の孫の1人
・実は倫子さまの幼なじみ
・幼い頃に養子に出されているため将軍になる権利がない
・養子に出された経緯として田沼意次が暗躍した(結果、後継者争いから追放された)
・倫子さまは初恋の相手
・どうやら大奥の内情を知る手立てがある
正直この程度のことしか分かっていなかった。






しかし遂に(公式でも「遂に」の文言が書かれていたが、いやほんと、“遂に”)定信さまが6話にして大胆に動き始める。
きっかけは父・宗武が病床に伏せったこと。
自身の死期を悟った宗武は息子・定信に吉宗公から引き継いだ刀を託し、最後にとある言葉を吹き込んでこの世を去っていった。





その頃、大奥で倫子は悩んでいた。
側室であるお知保の元で若君が誕生する一方で自身は未だに懐妊する気配が少しも見られなかったから。
妊娠しやすくなると言われる香を焚いてもらい、効果があるとされる食事を摂り、毎日神仏にお祈りを捧げているにも関わらず、である。
倫子を想うが故に気遣ってくれる家治ともすれ違いが生じ、どうしようもない嫉妬や劣等感で涙すら浮かんでしまう始末。
そんな中、不意に届いた定信からの文にはこう記されていた。
欲を持つ以上、誰かを羨み、妬むこともあるでしょうが、倫子殿はそのままでこの上なく素敵ですよ
上様を愛してしまったがためにドロドロとした愛憎入り乱れる『大奥』にひっそりと染まってしまい、お知保に嫉妬心を抱き、それにより自己嫌悪もした倫子は定信からの文を読んで本来の“らしさ”を取り戻し、再び家治と向き合い心を通わせる結果に。

4話でも城下町をデートして倫子さまに簪をプレゼントしたり彼女を巡って上様を大煽りするなど、何かと倫子さまを気にかけている定信さま。
「初恋の御方」というだけあって悩める倫子さまに遠回しな助言をするなど粋な優しさを持った誠実な御仁。
……………だと、思っていたのですが













なんと付き人が倫子さまに「子ができやすくなる」と薦めて焚いていた香の中にはむしろ子ができにくくなる成分が入った薬草が混ぜられていることが発覚。
お品さんに薬草のことがバレた女中は何とかお品さんの元から逃げおおせたものの、彼女を差し向けた張本人である定信さまに無惨にも殺されてしまったのでした。







この香に関する大どんでん返し、6話のラスト数分で明かされた衝撃の事実で。
視聴者…というか私のことを大いに狂わせた。


定信さまが父から遺言のごとく囁かれた約束とは「家治の血筋を根絶やしにし、定信自身が頂点に立つ」こと。
要するに「次期将軍になれ」というようなもの。
なるほど?現当主が子どもごとみんな死んでしまったところへ「実は家治様と同じく吉宗公の孫にあたる男」が登場すれば大手を振って玉座に着くことが叶う……のか?(ほんとか?)


幼少期に養子に出される形で後継者争いを追い落とされた人が再び成り上がることが叶うのか、詳しい事情は分からんけども。






いずれにせよ、定信さまは父親との約束を果たすために刀を抜く道を選んだのである。
何よりゾッとするのは「家治の血を根絶やしにする」目的のために定信さまが倫子さまに取った行為。
Xでも大いに狂わされた旨を語ったけど。
薬草を混ぜた香を嗅がせて妊娠を阻み、焦燥感に駆られる倫子さまへ丁寧な文を送り「今のままで“この上なく”素敵ですよ」と優しく優しく抱き込んで、子ができなかったとしてもいいんじゃないかと自発的に諦めさせようとしていたわけですよ。
額面通りに受け取れば倫子さまの本質を見抜き優しい言葉で諭しているのに、真意を知れば優しさでも何でもない。
しかもこの行為に至った理由が“初恋の御方”である倫子さまを上様が射止めたことへの嫉妬心でもなければ目的を果たす過程で倫子さまの子を手にかけるとなったら決心が鈍るからなんて殊勝な考えからでもない。
倫子さまが子を産んだら、その子を殺すときに倫子さまが悲しむからである。
つまり“家治の血筋”にあたる子どもは当然のように殺す算段にはなっているということになる。
“我が子を殺されて倫子殿が悲しむ顔は見たくなかった”という意味になる。





こんなに、一部の隙もないくらい常軌を逸した行動は、実は幼少期から片鱗があった。
『大奥』第1話。
物語の冒頭のシーンにて。
幼い頃の倫子さまが、おのこに呼びかけられて振り返ると羽を片方毟られたトンボを目にしてゾッとする、という場面がある。
何を隠そう、このトンボの羽を毟った少年この後の定信さまである賢丸なのだ。
そして倫子さまに「こんなことやめてあげてよ!可哀想でしょ!」と絶叫された賢丸は、表情ひとつ動かさず「“可哀想”……?なぜだ?」と返す。
トンボの羽を毟って動けなくして手中に納めるという行為から窺える残虐性を、幼少期から定信さまは理解できていなかった。
女性に子を産みにくくする作用のある薬草を嗅がせる行為の狂気性も、おそらく定信さまは理解していないのである。
何てこった。物語が始まってからずっと、遠く離れたところから密かに倫子さまの身を案じ、時に上様に発破をかけるかのような立ち振る舞いをしていたのも「貴方がしっかりしてくれなきゃ倫子殿が幸せになれないじゃないですか」的な考えからくるものなのかと思っていた私の予想を粉々に砕かれてしまった


ちなみに、これを書きながら「いや待て、あのお香を嗅がせていたのは、“優しさ”ではあったのかもしれない」と不意に思った。
だって、子が産まれてきてしまったらたとえ倫子さまの子といえど「家治の血筋」として手にかけることになる。

どうせ死ぬ命なら最初から産まれないようにしてあげよう的な。

「殺して悲しませることをしたくないならそもそも産ませないようにしよう」的な。そんな猟奇性に全振りしたマリー・アントワネットみたいなスタンスだったら本当にどうしよう。
せっかく産まれてきた子がすぐに死んでしまったら倫子殿は悲しんで“可哀想”になるから、せめてそうならないようにしてあげよう」という価値観から“可哀想”の単語が出てきてしまったら。
駄目だ、自分で言ってて哀しくなってきた。
……いやでも、ワンチャン可能性あるからなぁ…。
「倫子殿が悲しむ顔だけは見たくはなかったのだがなぁ」って彼女を思い返す時にうっすらと穏やかな笑みを浮かべていたことを思うと可能性を捨てきれない自分がいてとてもとても苦しい。



ちなみに外堀を埋めるような形で倫子さまにお子を諦めさせようとしていたのは定信さまだけではない。
お知保さんを差し向けて嫡男をもうけさせた大奥総取締の松島様も同じだった(彼女の場合は上様を促して外堀を埋めさせようとしていたのだけど)。
投げかけている言葉の方向性は同じだけど、実はこの2人が危惧していることはまるで違うという対比も恐ろしい。
松島様は自分の配下の側室から嫡男が産まれた以上、もう子どもは産まれてほしくない。邪魔者同然だから
まして正室から若君が産まれようものなら後継者争いは熾烈を極めることになる。
そして仮にそれに負ければ自分は権力を握れなくなるので産まれられては困るわけだ。
だから松島様は自分のために倫子さまに諦めさせようとした。

対して定信さまは、子が何人産まれようと知ったことではない。
何故ならどうせみんな殺すから
産まれれば産まれるほど殺す人数が増えると言うだけで別に産まれられて困る理由はない。
再三言ってるけど我が子を殺される倫子殿が困るだけなのだ。
そう、何と恐ろしいことに定信さまは倫子さまのために倫子さまに子を諦めさせようとしていたのである。


とんでもねぇ対比もあったもんだ。
まぁこれは私が勝手に感じているだけだからそのつもりで脚本が書かれているかは知らないけど。





それから、差し向けた女中が失敗したことで命乞いをする時の何の感情もない目の色。
冷たいという言葉で形容することすらできない、“無”の表情。
あたかも「シナリオを書いていた紙を書き損じてしまったから丸めて捨てる」程度の関心しかなさそうな顔つきに心底絶望した。
それこそ、逃げないようにトンボの羽を毟った行為を“可哀想”と思えなかった幼い頃と同じ目の色だった





そう、トンボ。
トンボなんだよ。
定信さまは羽を毟ったトンボに無感情でいられてしまう男なんだよ。
これの何が問題って、大奥という物語においてトンボというのは重要な存在だから。


この『大奥』というドラマの中で、しばしば主人公・倫子さまのメタファーとしてトンボの表現が登場する。
「トンボは前へ前へと飛んでいくから見ていると元気が出る」という言葉を受けてのお品さんの「倫子さまみたいですね」という発言も。
女中たちの嫌がらせで懐紙入れ用の布を切られてしまった時に羽の部分が切れたトンボを、傷を負いながら手で縫い合わせた末にそれを上様が選び受け取ったところも。
側室となったお知保さんとの御渡りの夜、上様が彼女に覆い被さる時に屏風の中のトンボと見つめ合い葛藤した場面も。
トンボという存在が倫子さまのメタファーとして描かれているのなら。
そう考えるなら、冒頭のトンボは。
賢丸(後の定信さま)によって、トンボは羽を毟られてしまっているのである。

その正体が、6話によって遂に確定してしまった時の演出が憎らしいほど救いがなくてゾクゾクしてくる。
今もやはり、定信さまは「羽を毟られたトンボがなぜ可哀想なのか」を知らないまま、「倫子殿が子を授からないように香を嗅がせている」という展開が示されてしまっていた。



どの角度から見ても完璧なくらい幾重にも折り重なった狂いっぷりを見せつけられてトンボ(倫子さま)に思いを馳せた結果、情緒がボロボロになった。
しかし私は元々創作によって情緒を振り乱されることが堪らなく好きな業の深い人間だからこのボロボロっぷりが気持ちよくて仕方がない
次回以降も暗躍していく様子の定信さまだけど、お願いだからあのお香の正体だけは倫子さまにバレないままお品さんの懐にしまわれて終幕を迎えてくれないものか……


いずれ定信さまの本性(野望?)的なのは倫子さまや上様も知るところになるんだろうけど、もしもその中で「どうせ殺すんだから最初から産まれない方が倫子殿が無駄に悲しまなくて済む」という理由から子ができにくくなるよう仕向けられていたことを倫子さまが知ってしまったら、倫子さま諸共に私の情緒がぶっ壊れてしまう。
それもそれで、創作物として受け取る側の私は一興ではあるけど倫子さまは…あの………本当に上様とひたすら幸せになってほしいので…………!!